どの家からも
外観でなく内なる空間から
暮らしを楽しんでますよ、と
声が聞こえてくるのです。
 
石井先生のお宅は兵庫県西宮市、「目神山十二番通り」にあります。ここの土地を、先生は40年以上前に購入されました。まだ仕事を始めて数年、家を建てる資金はないけれど、将来のために土地だけは確保しておきたい。そう考えて見に行かれた場所は、当時まだ電気も水道も通らず、道路も整備されておらず、人しか通れない山道を駅から30分歩いて行かれたといいます。でも、たどり着いたその土地は、周りにマツやナラ、ソヨゴ、ツバキ、ヤマザクラなどの樹木が生い茂り、自然がそのまま残されていました。その環境にすっかり心を奪われた石井先生は、何年先になろうともここに住みたい、そう強く思われて土地を購入。それから20年近く経ったのち、ついに自分の家を自分で設計する、そうして夢を叶えた住まいを『回帰草庵』と名付けられたのです。そして、現在、目神山十二番通りには、隣も、またその隣も、さらにはその真向かいの家も、という感じで先生が設計された家が並んでいます。豊かな自然に恵まれた環境と、その環境に溶け込む建物のたたずまいに心を惹かれた人々が、ぜひ私の家の設計も!と次々に頼みに来られたのだそう。先生に案内していただきながら通りを歩くと、石造りが印象的だったり、びっくりするぐらい細長い家だったり、屋根の上が家庭菜園だったり、どれひとつとして似たような家はなくて。確かに建物の外観ではなく内側から、楽しんでますよー、の声が聞こえてきました。