心をきれいにほどいてくれる場所。
 
池の水面をやさしくのぞき込むようにしている北庭の木々。きれいです。その木々の上にちょこっと頭を出しているのは五重の塔。ああ、とても京都らしいなあと感じる風景。まっすぐシンプルな直線で姿勢を正している白砂もとってもいい。こんなところでぼーっとしていると心の中にぽかんぽかんと余白が広がってきて、毎日のいいことややなことで、ほとんどいっぱいになってしまっていた気持ちもゆっくりほどけていきます。庭の楽しみ方は、ただきれいだなあと見て終わるだけでなく、そこにポンと自分を置いてみて、その場の空気の中にどんどんほどいていくことにあるのではないでしょうか。誰かと仲良く一緒に来るのもいいんだけれど。一人ここにいて、すーっと自分をいろんな角度から透かして見て、そこにいろんな風や木や水などのきれいなところを重ね合わせてみたりすると、どんどん自分もきれいになっていけるような気がする。昔の人はこの庭に想いをあずけ、風雅のこころを競って、きれいな詩をたくさん詠ったそうですから、そこかしこにはまだそんな詩の余韻がほのかに残っているような気がします。そうそう、歴史の時間に習ったあの源氏物語や、方丈記、そして徒然草や、平家物語にも、この仁和寺はしっかり登場するそうですから一千百余年の歴史は、それはそれは由緒正しきものなんだろうと感心してしまいます。果たしてこれまでにどれだけたくさんの人たちがここに心をあずけてきたのでしょうか。