こんなふうに、ほっこり座ってみたいなあ。
 
ほっこりとした太陽の温かさを膝の上に溜めながら、なんにも考えない。油断なんて、もういっぱいして、うっかりなんてごろごろさせて、それでも、今はもう、なんにも考えないんだぞと寝言のようにつぶやいてみる。そんな教科書みたいにまじめな「小春びより的縁側での正しい過ごし方」があなたもここでなら体験できるかもしれません。小さな入り口の門をくぐって見上げると、両手で覆いかぶさってくるような美しい木立の輝き。その緑のトンネル(秋には赤いトンネル)に誘われるようにして、よいしょよいしょと土段を登っていくと本堂が見えてきます。その向こうにはまた見上げるような緑の山が座っていて自然の中に突然に切り出された隠れ家のような印象。あ、ちょっといいところを見つけた!みたいに不思議にわくわくと、うれしい気分になりました。元々ここは、往生院三宝寺という名のお寺だったそうで、平家物語に登場する平清盛の家臣、斉藤時頼と建礼門院の雑仕女・横笛との悲恋物語にゆかりが深く、二人の木像が今も本堂に安置されています。あ、そうなんだ、と、幸せなひなたぼっこの中で知った遠い昔の悲しい物語に、なんだか、より一層しみじみとした時間が流れていきました。